【着物の豆知識】八掛(はっかけ)とは?
投稿日:2026年11月2日 (最終更新日:2026年11月2日)

着物の世界には、普段の洋服では耳にしない専門用語がたくさんあります。着物を選んだり仕立てたりする際によく登場する「八掛(はっかけ)」という言葉もそのひとつです。初心者の方にとっては「どこのパーツ?」「どんな役割があるの?」と疑問に思うことが多いかもしれません。実はこの八掛、着物の着心地や美しさを左右する、非常に重要な役割を担っています。今回は、着物の豆知識として「八掛」の意味や役割について、きもの初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. 八掛(はっかけ)とは?
八掛(はっかけ)とは、ひとことで言うと着物の「裏地」の一部です。裏地が付いている着物を着て歩いたとき、足元からチラッと色のついた布が見えるのを見たことはありませんか?上の写真で言うと、ピンクの無地の部分です。あの、歩くときにめくれて見えやすい「足元(裾)」や、手首の「袖口」の裏側につけられた布のことを「八掛」と呼びます。
着物の裏地は、上半身用の「胴裏(どううら)」と、下半身・袖口用の「八掛」の2つの布で構成されています。胴裏が白い布で作られることが多いのに対し、八掛は歩くときや動いたときにチラリと外から見える部分であるため、着物の表地に合わせて色や柄のついた布が使われます。
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2. 八掛の名前の由来
「八掛」という少し変わった名前は、この布を裁断して着物に縫い付ける際、合計で「8つ」のパーツに分けて掛ける(縫い付ける)ことに由来しています。
具体的には、前身頃の裏に2枚、後身頃の裏に2枚、衽(おくみ)裏に2枚、そして左右の衿(えり)の下に2枚(現在はここに袖口の2枚が追加されました)、合わせて8枚の布を使うことから、この名前が付けられました。「裾回し(すそまわし)」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。
3. 八掛の重要な3つの役割
八掛には、単なる裏地にとどまらない3つの大切な役割があります。
① 着物の生地を補強する
裾や袖口は、歩いたり動いたりするたびに擦れやすく、傷みやすい部分です。八掛を裏に当てることで、表地の生地を摩擦や汚れから守り、着物を長持ちさせる補強の役割を果たします。
② 着心地を良くし、裾さばきを美しくする
滑りの良い絹などの布を八掛に使用することで、歩くときに足元に生地がまとわりつきにくくなります。これにより、「裾さばき」が良くなり、着姿や立ち振る舞いがより美しくなります。
③ 着物に重みを持たせる(落ち感)
裏地をつけることで着物に適度な重み(落ち感)が生まれ、裾がヒラヒラとまくれ上がるのを防ぎ、シルエットを美しく保つことができます。
4. 「見えないおしゃれ」を楽しむ和装の美学
八掛の最大の魅力は、なんといっても「見えない部分のおしゃれ」を楽しめることです。表地と同系色の八掛を合わせて上品にまとめるのはもちろん、あえて表地とは対照的な色(反対色)を選んでアクセントにしたり、柄が入った八掛を選んで個性を出したりすることもできます。歩くたびに裾からチラリと覗く八掛の色合わせは、着る人のセンスが最も表れる部分だと言われています。
もともと八掛は、着物の裾を守るための実用的な補強布として江戸時代より前から存在していました。しかし江戸時代に入り、幕府から贅沢を禁止されると、人々は表地を地味にする代わりに、この「八掛」などの裏地に鮮やかな色や柄を仕込んでおしゃれを楽しむようになります。
これが「裏勝り(うらまさり)」と呼ばれる粋な美学です。実用品として生まれた八掛が、時代を経て「自分らしさを表現するキャンバス」へと進化し、その奥ゆかしい色合わせの文化が現代の着物にも受け継がれているのです。
まとめ
今回は、着物の裏地の一部である「八掛」について解説しました。見えない部分で生地を守り、美しく歩くための機能性を持ちながら、動いた瞬間の美しさまで計算されている八掛。着物の奥深さと、日本ならではの細やかな美意識を感じていただけたのではないでしょうか。
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