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袴の歴史 《古代~現代の袴の歴史の移り変わり》

卒業式の袴の歴史と由来

卒業式のシーズンが近づくと、街中で見かける華やかな袴姿。
「先輩たちが着ていたから」「振袖よりも動きやすいから」という理由で選ぶ方が多いですが、そもそも「なぜ卒業式に袴を着るのか?」そのルーツを詳しく知る機会は少ないかもしれません。

実は、袴の歴史は古代まで遡り、時代の変化とともに「男性の戦闘服」から「貴族の下着」、そして「学ぶ女性の象徴」へとドラマチックな変化を遂げてきました。
今回は、正倉院に残る最古の袴の話から、明治・大正時代の「ハイカラさん」ブーム、そして現代の卒業式文化に至るまで、その深い歴史と由来を徹底解説します。歴史背景を知ることで、ハレの日の装いがより一層感慨深いものになるはずです。

1. 袴の起源と変遷:モンペから武士の礼装へ

袴の歴史は非常に古く、日本の歴史書である『古事記』や『日本書紀』にもその記述が見られます。
現存する最古のものとしては、奈良の正倉院に所蔵されているものがありますが、その形状は現在の優美な袴とは異なり、戦時中の「モンペ」に近い実用的な形をしていました。

当初は動きやすさを重視した実用着でしたが、時代が進むにつれて権威を表す「儀礼的な衣服」へと変化していきます。特に武家社会においては、武士の正装として定着しました。
この頃の袴は、馬に乗りやすいように股が割れている「馬乗り袴(うまのりばかま)」が主流であり、これが現在の男性用袴の原型となっています。
一方、現在卒業式で女性が着用しているスカート状の袴(行灯袴/あんどんばかま)が一般化するのは、ずっと後の時代のことです。

2. 女性と袴の「空白の時代」:下着から宮中儀礼へ

では、女性はいつから袴を履いていたのでしょうか?
実は飛鳥・奈良時代から女性も袴を着用していましたが、平安時代におけるその役割は、十二単(じゅうにひとえ)の下に履く「下着(下袴)」のようなものでした。現代で言うところのランジェリーに近い扱いだったのです。

その後、鎌倉時代から室町時代にかけて、女性の服装は大きく変化します。
「小袖(こそで)」と呼ばれる現在の着物の原型が表着として定着し、活動的であることが求められるようになると、女性が袴を履く習慣は一般庶民の間から徐々に消えていきました。

江戸時代になると、公家や武家の女性であっても袴を履くことは稀になりましたが、完全に消滅したわけではありません。宮中での厳格な儀式の際や、あるいは火事の際の「火事装束」としてなど、特殊な場面では伝統的に用いられ続けていました。
このように、長らく女性の日常着から離れていた袴が、劇的な復活を遂げるのが「明治時代」です。

3. 明治の革命:なぜ女学生は袴を履いたのか?

明治時代に入り、文明開化とともに女子教育が始まると、学校という「椅子と机」の生活様式が導入されました。
着物に帯というスタイルでは「帯が背もたれに当たって座りにくい」「裾が乱れて動きにくい」という実用上の問題が発生しました。そこで注目されたのが、かつて宮中の女官が着用していた袴です。

【袴復活のタイムライン】
●1871年(明治4年):
一般の女性が袴を着用することが認められるようになり、女学校の教師が最初に導入しました。

●1880年代〜:
下村輪子らが考案した、股のないスカート状の「行灯袴(あんどんばかま)」や、紫色の袴が女学生の制服として採用され始めました。

当時はまだ義務教育が完全ではなく、女学校に通えるのは裕福な家庭の子女に限られていました。1876年(明治9年)頃には幼稚園の保母や園児にも袴姿が見られたそうですが、これもまた「良家の子女」であることの証(ステータスシンボル)でもあったのです。

4. 「海老茶式部」と大正ロマン:流行の発信源

明治後期から大正時代にかけて、袴は単なる制服を超え、ファッションアイコンとしての地位を確立します。
当時、華族女学校の学生たちが「海老茶色(エンジ色)」の袴を好んで着用したことから、紫式部をもじって「海老茶式部(えびちゃしきぶ)」という言葉が流行しました。

また、西洋文化の影響を受け、足元には草履ではなく「革靴(ブーツ)」を合わせ、髪には大きなリボンを飾るという、和洋折衷の「ハイカラさん」スタイルが大ブレイク。
当時の新聞や錦絵にも描かれたその姿は、先進的で活動的な「新しい時代の女性」の象徴として、多くの女性たちの憧れの的となりました。
この時代の「大正ロマン」な雰囲気は、現代の卒業式コーディネートでも根強い人気を誇っています。

5. 現代へ受け継がれる「自立した女性」のシンボル

昭和に入ると洋服が日常着となり、袴は再び日常から姿を消しました。
しかし、明治・大正期の女学生たちが抱いた「学問を修め、社会へ羽ばたく」という精神は、現代の卒業式文化の中にしっかりと息づいています。

現代の女子学生が卒業式に袴を選ぶ理由。それは単に「可愛いから」だけではありません。
かつての女性たちが、動きやすい袴を身につけて新しい時代を切り拓こうとしたように、「学業を成し遂げ、次のステージへ自立して歩み出す」という決意を表す礼服として、これ以上ふさわしいものはないからです。

古代から続く伝統と、明治・大正の革新的なスピリットが融合した「袴」。
一生に一度の卒業式には、ぜひその歴史の重みを感じながら、あなたらしい最高の一着を選んでみてください。


白色地に雪輪・緑袴(刺繍) (二尺袖)/卒業式
白色地に雪輪・緑袴(刺繍) (二尺袖)/卒業式

紫色地に矢絣・臙脂袴(刺繍) (二尺袖)/卒業式
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越子(えつこ)

京都かしきもの編集スタッフ。着物に携わること50年。着物の仕入れやコーディネート・着付け・リメイクまで幅広くこなします。自分の着付けはもちろん、友人や親戚から着付けを頼まれることも。趣味は友達と着物で京都散策をすること。お抹茶と和菓子が好きです。
◆資格・免許◆日本和装協会認定資格/染織補正士/きもの文化検定/和裁技能士

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